すべての日本人
強烈なタイトルをつけましたが、決して釣りタイトルではありません。日本の科学が現状いかに危機的な状況にあるのか、少しでも多くの日本人に知っていただきたいのです。
この記事では
- 科学先進国“だった”日本
- 論文とノーベル賞の相間
- 日本の現状と世界との比較
- 日本が科学先進国に返り咲くには
の4テーマについて解説していきます。
科学先進国 “だった” 日本
近現代を生きる科学者にとって最も権威ある賞はなにか。それは間違いなく、名実ともにノーベル賞でしょう。
- 物理学
- 化学
- 生理学・医学
- 文学
- 平和
- 経済学
の6分野で顕著な功績を残した人物に贈られ、その中でも上記3つの部門における受賞は、科学分野における世界最高の栄誉であると考えられています。
それらの3分野において日本は世界で5位、欧米以外の国ではダントツの1位の受賞者数を誇っています。
1949年に初の日本人受賞者となった湯川秀樹を筆頭に、期間を戦後に絞ると日本は世界でもトップのペースで受賞者を輩出してきました。
最近も日本人がノーベル賞を受賞したというニュースをよく聞きますよね?京都大学の山中伸弥さんや本庶佑さんなどは記憶に新しいと思います。
ではなぜ日本は科学先進国“だった” と表現するのか。
論文とノーベル賞の相関
なぜ僕が日本を科学先進国“だった” と表現するのか。それは「受賞理由となる論文の発表から受賞までの間に25年のタイムスパンがあるから」です。
この25年という数字は全ての日本人受賞者の “受賞した年 − 受賞理由の論文が発表された年” から簡単に導き出せます。(因みにiPS細胞で有名な山中伸弥は、論文の発表から受賞まで8年という異例の速さで受賞し世界を驚かしました。)
「受賞した研究が間違っていた」なんて事にならないように、科学的に間違いがないことを確認する期間を要するようです。その期間が約25年という訳です。言ってしまえば現状ノーベル賞は“25年前よく出来ました賞”なんです。
ではこの25年という数字にどれだけの信憑性があるのかに関してはノンフィクションライターの岩本宣明さんがこの記事の中で情報をまとめていたので引用させていただきます。
それがこちら。
ノーベル賞の国別受賞者のシェアと、被引用論文数のシェアにどのくらいの相関があるかを調べたグラフです。因みに被引用論文とは、他の科学者によって引用された論文で、“論文の中でも質が高い論文”のことです。

これらの数値を散布図に変換したものがこちら。

非常に強い相関関係があることは一目瞭然です。
これを言い換えると、2020年現在の国別の被引用論文数を見れば、25年後のノーベル賞の受賞国のシェアもある程度予測出来てしまうと考えられているのです。
では近年の日本の被引用論文数を含む現状はどうなっているのでしょうか。
日本の現状と世界との比較
まずは世界各国の論文数と、その中でも多く引用されている上位10%の論文数がどのように推移したのかをご覧ください。

ボロボロです。2003-2005からの10年でこの有様です。

なんて言われていたのも過去の話です。もはや質・量ともに完敗です。25年後、毎年中国人がノーベル賞を受賞している光景をただ指を加えて眺めることになってしまいます。
日本は既に科学劣等国である。
残念ながらこれが今の日本の現実です。
では、なぜ日本はこんな現状になってしまったのか。再び科学先進国に返り咲くことは出来ないのか。次の章で解説していきます。
原因
この惨憺たる状況を改善しようとした場合、まずは原因の把握が必要です。日本の科学力・研究力がここまで低下してしまった原因はなんでしょうか。
驚愕の事実がこちら…!

金、使ってないんですよ。

2000年度の時点で発展途上だった中国、韓国の伸びが大きいのは100歩譲って目をつむるとしましょう。それでも米国とドイツが1.8倍、英国が1.5倍に予算を増やしている一方、日本(とフランス)はほぼ横ばい。つまり予算を増やしてないんです。
さらに研究の拠点である国立大学への交付金の2004年からの推移がこちら。

既にノーベル賞を受賞した研究者が資金集めに奔走してる有様。
ついでに、研究に直接は関係ないですが、教育にかける財政支出の推移がこちらです。

もうおわかりいただいたと思います。日本という国は2000年頃(正確には1997年の橋本内閣)から一貫して「教育にも研究にも投資を増やしてこなかった」国なのです。こんな国、世界的に見ても恐らく日本だけです。
日本が科学先進国に返り咲くには
こればっかりは“もっと金をかける” しか方法はありません。
そしてそのためにはプライマリーバランスの黒字化という誤った政策を転換して、適切に投資(借金)していくしか道はないです。(詳細は下記事参照)
まずは日本が今置かれた状況を正しく認識することからです。その後どう考えるかは、皆さん次第。
最後に
この記事ではときに刺激的な言葉も用いて日本の危機的状況を述べましたが、それはひとえに科学や日本が好きだからこそです。
決して科学を愛せ!日本を愛せ!なんて言うつもりは毛頭ありません(笑) しかし、これは持論ですが

だと確信しています。
この記事をきっかけに少しでも日本の科学、研究に意識を向けていただけたら幸いです。
ではまた〜